NBAの周辺

NBA関連のメディアで話題になっているトピックなど

ブレイク・グリフィンのあっと驚くダンク・シュート3連発

「今年の新人王」の呼び声も高いブレイク・グリフィン(LAクリッパーズ)の猛烈ダンク。来月半ばのオールスターで、ダンクコンテンストにでるか、あるいは新人ながら日曜日の本戦にでるか、と気がきではない今日この頃である。

『星条旗よ永遠なれ』とバスケットボール--マーヴィン・ゲイ、デスティニーズ・チャイルド、アヌープ・デサイ

昨日今シーズンのNBAオールスターゲーム(ALL-STAR 2010)があって、毎回楽しみにしている試合前の国歌斉唱は、カナダ国歌("O Canada")はカナディアン・テナーズ(The Canadian Tenorsという男性四人のコーラスグループが、そして米国国歌(The Star Spangled Banner:『星条旗よ永遠なれ』)はグレッチェン・ウィルソンGretchen Wilson)という実力派(?)女性カントリー歌手がそれぞれ歌いあげたのだが、これを観ていた家族の者たちから「いまいちだねぇ・・・」といった感想が聞かれ、また私もそれに「至極もっとも」と頷いていた。というのも、実は以前にYouTubeで"national anthem"で見つかる動画を、家人たちと見ていたことがあったから。

YouTubeには過去から現在まで数多のパフォーマンスがあがっているが、そのなかから独断でベストスリーを選んでみる。

第3位)アヌープ・デサイ(Anoop Desai)


"Anoop Desai Sings the National Anthem"

アメリカン・アイドルのシーズン8で決勝ラウンドまで進んだインド系米国人、アヌープ・デサイ(Anoop Desai [Wikipedia英語版])は、大学バスケットボールの名門、ノースカロライナ大学(University of North Carolina at Chapel Hill:UNC)のOBで現在も同校の大学院で研究を続けている。

UNCといえば、有名なビジネススクールなど学業面でも優秀らしいが、それ以上に(少なくともバスケットボール・ファンにとって)有名なのは名門チーム「ターヒールズ」(TarHeels)で、ここは伝説の指導者故ディーン・スミス(Dean Smith)のもと、"神様"マイケル・ジョーダン(Michael Jordan)をはじめとして、ラリー・ブラウン(Larry Brown:現シャーロット・ボブキャッツHC)、ジョージ・カール(George Carl:現デンバー・ナゲッツHC)といった名ヘッドコーチ、ジェームズ・ウォージー(James Worthy: マジック・ジョンソン、カリーム・アブドゥール・ジャバーらと80年代に「レイカーズ王朝」を築いた名選手)、リック・フォックス(女優ヴァネッサ・ウィリアムズの元夫としてのほうが有名?)といったNBA元選手、そして現役でもラシード・ウォーレス(Rasheed Wallace:現ボストンセルティクス)、ヴィンス・カーター(Vince Carter:現オーランド・マジック)といったオールスター選手を輩出している。

そういうUNCのホームであるDean Smith Centerで、今年1月10日の対バージニア工科大戦の試合前に行われたこの国歌斉唱。アヌープの歌も悪くないが、それ以上に観客の盛り上がりがスゴくて楽しめる。

第2位 復活したデスティニーズ・チャイルド (Destiny's Child)


"Destinys Child National Anthem"

これは2006年のオールスターゲームの時のもの。会場はヒューストンのトヨタセンターで、地元出身のデスティニーズ・チャイルド(Destiny's Child)が、この晩のために「一夜だけの再結成」を果たした。大観衆を前にしたアカペラでは独唱だとちょっと厳しそうだが、この3人のコーラスにはさすがにそんな心配はない。

なお、この年の出場選手の顔ぶれは・・・とWikipediaを調べてみたが、今年とあまり違いはないことがわかった。

第1位 マーヴィン・ゲイ(Marvin Gay)


"Marvin Gaye sings American National Anthem"

The Star Spangled Bannerの原型をとどめないマーヴィン・ゲイの崩しっぷり--国歌というより"Sexual Healing"など自分の持ち歌に近い?--もスゴイが、それに応える観客の盛り上がりもモノ凄い。厳粛に聴くいまのスタイルとは違って、手拍子や掛け声まで聞こえる

マーヴィン・ゲイが不慮の事故で亡くなったのは、わすれもしない1984年4月--私は大学の入学式と前後してそのニュースを耳にしたと記憶している--のことだから、1983年のオールスターゲームでのこのパフォーマンスはそれより1年ちょっと前のもの、ということになる。会場は長らくレイカーズの本拠地だったザ・フォーラム(ロサンゼルス近郊)で、コートの周囲がイエローなのはそのせい。

この年の出場選手の顔ぶれはといえば、東軍はスターターが、アイザイア・トーマス(Isiah Thomas:PG)、モーリス・チークス(Maurice Cheeks:SG)、ラリー・バード(Larry Bird:SF)、ジュリアス・アービングPhiladelphia:PF)、モーゼス・マローン(Moses Malone:C)と、ほぼ全員が殿堂入りかと思わせるようなスター揃い。リザーブにはロバート・パリッシュ(Robert Parish:C)(Bill Laimbeer:C/PF)といった名前も。

それに対し、西軍もマジック・ジョンソン(Magic Johnson:PG)やカリーム・アブドゥール・ジャバー(Kareem Abdul-Jabbar:C)などのスターターに加え、ジョージ・ガーヴィン(George Gervin:SF/SG)、ジム・パクソン(Jim Paxson: SF/SG)、ジャック・シクマ(Jack Sikma:C/PF)といった選手が名を連ね、コーチは名将パット・ライリー(Pat Riley)。

これだけ豪華な顔ぶれのゲームでしかもゲーム前の国歌がマーヴィン・ゲイというのもいまとなっては夢のような話に感じられるが、今年のオールスターゲームを何十年か後に振り返った時、「コービこそ怪我で出られなかったが、レブロンドワイト・ハワードが出場して、しかもアッシャーやアリシア・キーズの観られたなんて!!ということになるのだろうか。

なお、このマーヴィン・ゲイのバージョンは2008年北京五輪出場の米国チームをフィーチャーしたナイキのCMで使われたという。


Nike Basketball Commercial

The Midnight Lover

The Midnight Lover

NBA流「スター選手抜きで、スーパースター軍団に勝つ方法」

 ふだん、ほとんどスポーツとは縁の無い私だが、なぜだかNBA(プロ・バスケットボール)だけはもう15年くらい試合の中継放送を見続けている(一度だけだが、埼玉スーパーアリーナで開幕戦を観たこともある)。そのNBAも5月に入り、現在カンファレンス・セミファイナル(準決勝)の真っ最中。残り8チームのなかから今シーズンのチャンピオンチームが決まるまであと1ヶ月というところまで進み、いよいよ佳境にさしかかっているところである。

 そんなこともあって、この週末、雑誌『クーリエ・ジャポン』の最新号(2009年6月号)に「もうひとつの『マネー・ボール』」と題する翻訳記事が出ていたのを見つけ、さっそく買って読んだ。著者はあのマイケル・ルイス(『Blindside』『マネー・ボール』『ニュー・ニュー・シング』『ライアーズ・ポーカー』ほか)。そして彼が今回焦点を当てたスポーツチームはNBAヒューストン・ロケッツ(Houston Rockets)で、そのなかでもふだんは「脇役」を演じているフォワードのシェイン・バティエ(Shane Battier)が主人公である。

 New York Times のサイトにあるオリジナル記事のタイトル("The No-Stats All-Star)がよく示すように、このバティエという選手、なかなか優れたプレーヤーだが、NBAでもっとも頻繁に引用される記録(統計データ)では、いまひとつパッとしない。シェイン・バティエのプロフィール(ESPN)をみるとわかるが、一試合あたりの平均得点7.3、リバウンド4.8、アシスト2.3と数字の上ではいかにも凡庸である。

 大学バスケットボールの名門デューク大学--ここの名物ヘッドコーチ、Mike Krzyzewskiはなんどか米国代表チームを率いた名将といわれる人物。ちなみに、このKrzyzewskiという名前の読み方は米国人にも難しいらしく、ふつうはイニシャルをとって「コーチK」と呼ばれているとか--の「ブルー・デビルズ」(Blue Devils)で活躍し、NCAAトーナメントのベスト4が2回、うち一度(4年生の時)はチャンピオンに輝いている。学業のほうも優秀で、高校卒業時の成績(GPA)は4点満点で3.96。また、NBAにはアーリーエントリーという制度もあり、学業があまり得意でない、もしくはプロで1日も早くやりたいと願う選手は卒業を待たずにプロ入りすることもめずらしくないなかで、4年生まで終えたというのは、よほどしっかりした考えの持ち主であることの証拠かも知れない。

 なおアーリーエントリーについては、「生身の身体でとんだり跳ねたり、ぶつかり合ったり」というバスケットボールの試合の性格を考慮すると、理に叶った選択という見方もできる。学位取得にこだわってプロ入りを先延ばしにしたのはいいが、最終学年のシーズン中に致命的な怪我をしてプロ入りを棒に振るというリスクも考えられるからだ。プロ入り後数年(4年目くらい?)もすると、レギュラー・準レギュラークラスの選手であれば、5〜8億円程度の年俸で複数年契約が結べ、各チームの柱となる"フランチャイズ・プレーヤー"であれば、「5年で60億円」くらいの契約もめずらしくない世界であるから、怪我に泣かされることの代償はあまりに大きい。

 話をバティエに戻そう。
 2001年にチームを全米大学王者に導き、優秀賞を獲得し、そしてドラフト1巡目6位というかなり上位でバンクーバーグリズリーズに入団したバティエだったが、とてもunselfishなそのプレーぶりが災いしてか、期待されたほどの”活躍ぶり"をみせることはできなかった。ここで「期待されたほど」という点には注釈が必要だろう。ふつうこの順位でドラフトされた選手は、そのフランチャイズを支えるプレーヤーになることが期待され、しかも入ったチームが弱ければ弱いほど、その期待は大きいという意味である。

 集団競技、しかもベンチプレーヤー(控え選手)やコーチ陣も含めた総力戦が求められるバスケットボールでは、歴史に残るようなスーパースターでさえいかにひとりで奮闘しようともチャンピオンにはなれない。そのことは、まだ成熟途中にあった80年代のマイケル・ジョーダン(とシカゴ・ブルズ)の例がもっともよく示すこのゲームのおもしろいところだ。そして、それと似たような理由から、「チーム・ファースト」を率先するバティエのような模範的プレーヤーも、ほかの選手の力が足りない、あるいは各選手の能力を引き出しチームとしての勝利に結びつける戦略がなければ、うまく結果を出せない/活躍できない・・・そんなこんなの理由が重なって、2006年のシーズン終了後に、バティエはヒューストンにトレードされてしまう。

 ところが、このトレードの陰にはある若いGMの思惑があった、というのがこの「もうひとつの『マネーボール』」の目玉のひとつである。弱冠33才にしてヒューストンのGM(ゼネラル・マネージャー)に就任したダレル・モーリーは、MIT(マサチューセッツ工科大学)のスローンビジネススクールMBAをとった新世代の球団経営者のひとりだが、チームの強化・選手のてこ入れをするにあたって、ひとつ大きな制約を受けていた。ヒューストンにはすでに2人のフランチャイズ・プレーヤー--ひとりはオール・スターにも複数回選ばれている点取り屋のトレイシー・マグレディー(Tracy McGrady)、そしてもうひとりは"中国の巨人"姚明(Yao Ming:Yaoの漢字は「女へんに兆」)--がおり、この2人分の年俸だけでチーム全体に認められたサラリーキャップ(年俸総合計額--それを超えた金額には課税が発生する)の大半を使ってしまっていた(ちなみに、今シーズンののサラリーはマグレディーが$20,370,437、姚明が$15,070,550。それに対してプロ7年目のバティエは$6,448,900)。そのため「(チームには)スーパースターをもう一人雇い入れる余裕はなかった」というモーリーは、「だから、スーパースター以外で、過小評価されていそうな選手に照準を合わせた」という。

 ちなみに、NBAでは「スーパースター級の選手3人を揃えられたチームは、優勝する確率がぐっと高まる」というのが、90年代後半からのある種の定説となっている。当時、マイケル・ジョーダン、スコッティ・ピペン、そしてデニス・ロッドマンを揃えたシカゴ・ブルズが2度目の3連覇を成し遂げ、またレギュラーシーズンで69勝(13敗)という驚異的な成績を残したりしていたからだ。もっとも、その後ヒューストンが、移籍したピペン、大黒柱ハキーム・オラジュワン、そして(豚キムチのCMで日本でも知られた)チャールズ・バークレーの3人(「スリー・アミーゴズ」と呼ばれた?)を揃えて優勝を狙うも失敗したりしてその信憑性も薄れたかと思われたが、昨シーズンにボストン・セルティクスが、ケビン・ガーネットポール・ピアース、レイ・アレンというオールスター選手/米国代表チーム("ドリームチーム")経験者を揃えて優勝したことで、またこの「スーパースター選手3人・・・」の説得力が増してきた。

 さて。このあとは、オリジナルの『マネーボール』を読まれた方にはお馴染みのパターンが展開される。MLBオークランド・アスレティクスのGM(ゼネラル・マネージャー)、ビリー・ビーン(Billy Beane)がそうしたように、ヒューストンの若きGMモーリーはまだ他人があまり気付いていない/重視していない「モノサシ」をつかって「過小評価」された選手をピックアップした。結局15人の選手を候補者としてリストアップしたが、そのなかでいちばん上のほうにあったのがバティエだったという。

 華々しいシュートを決めて得点ランキングの上位に名を連ねるわけでもなく、アシストやリバウンド、ブロックの多さといった「目立つ部分」で知られるわけでもないバティエの、どこがそれほど素晴らしいのか?。この答えについては、ぜひ「クーリエ・ジャポン」の記事を読んでほしいのだが--あるいは、英語を読むのが苦にならず、しかもNBAファンであるなら、NYTimes.comにあるオリジナル記事には、翻訳記事よりもさらに詳しい情報が出ているので、そちらを見てほしい--、ひとつだけ「プラスマイナス」というデータに関する部分を引用しておく:


 「プラスマイナス」は、ある特定の選手がコートに出ているときに得点にどういう影響が出るかを計測した数値だ。
 (略)
 プラスマイナスは、バスケットボールのゲームに及ぼす個人プレーヤーの影響を知るために有効な測定値になるという。いい選手でプラス3ぐらいになる。これは、彼がコートに出ていると、チームは対戦相手よりも平均して3ポイント多く獲得できることを表す。
 (略)
 昨シーズンの対(ロサンゼルス・)レイカーズ戦で、バティエはプラス10をマークしたが、これはオールスターゲームの常連選手と同ランクに入る。「プラス6でも、とてつもない数値だ」とモーリー。「チーム成績にすると、20勝近い差をもたらす」
 (略)

 この部分、オリジナルの文中では次のようになっている。


..... A good player might be a plus 3 ― that is, his team averages 3 points more per game than its opponent when he is on the floor. In his best season, the superstar point guard Steve Nash was a plus 14.5. At the time of the Lakers game, Battier was a plus 10, which put him in the company of Dwight Howard and Kevin Garnett, both perennial All-Stars. For his career he’s a plus 6. “Plus 6 is enormous,” Morey says. “It’s the difference between 41 wins and 60 wins.” He names a few other players who were a plus 6 last season: Vince Carter, Carmelo Anthony, Tracy McGrady.

 そう、地味で目立たないプレーぶりのバティエだが、実はこれまで7シーズンの通算では、ヴィンス・カーター、カーメロ・アンソニートレイシー・マグレディといったオールスター常連選手と同程度のチーム貢献度があり、さらに最良の状態ではドワイト・ハワードケビン・ガーネットといった現在のNBAを代表するプレーヤーと比肩する力を発揮しているのだ。

現実に起こった快挙

 この「もうひとつの『マネーボール』」という話には、2009年1月13日にあったロケッツ対レイカーズ戦の模様が随所に挿入されている。なぜ相手がレイカーズかというと、「前年(08年)3月16日にロケッツがレイカーズを破って、NBA史上2番目に長い22連勝を達成した」からだった。このゲームでレイカーズのエース、コービー・ブライアントをマークしたシェイン・バティエは、コービーを「無力化」し、いっきに名を挙げたのだった。NBAのシーズン得点王やMVP受賞経験もあり、近年ではチームリーダーとしての実力も身につけてきた真のスーパースター、コービー・ブライアントは調子が良ければ、一試合に40点も50点もひとりで取ってしまう能力の高さを誇る(たしか、最高記録は81点だったと思う)。そんなコービーがこの試合では24得点、シュート成功率はたったの33%(33本打って、11本成功)に押さえられていた。

 そういうある種の「因縁の対決」に焦点を当てることで、バティエの実力を浮き上がらせようという意図が著者のルイスにはあったのだと思う。だが、話の結末はアンチ・クライマックスに終わる・・・(記事の終わりをまだ知りたくないという方は、どうかこの後の部分を読み飛ばしていただきたい)。

 試合の最後、ヒューストンが1点リードして残り時間わずか、ボールを持ったレイカーズはとうぜん第一オプションのコービーがシュートを狙いに行く。ディフェンスに着くバティエ。「この最後の攻撃を守りきれば、ヒューストンに勝利が転がり込む・・・」という緊迫した場面で、コービーの放ったロングシュートは・・・うまくバスケットに入ってしまった・・・ここまでバティエに肩入れして読んできた者としては否が応でも、このシュートが外れることを期待してしまうのだが、そうならないところが、また一つの面白みとも感じられた。

 で、実はやっとここからが、この(私の)文章の山場となる(おもえば何と長い前振りであったか)。

 日曜の晩、この「もうひとつの『マネーボール』」を読んだ後、さっそくESPNのウェブサイトにアクセスしてみた。ウェスタンカンファレンスのセミファイナルで、この記事に書かれたのと同じロケッツとレーカーズがちょうど戦っているのを知っていたからだ。今シーズンは、レギュラーシーズンにレイカーズがリーグ全体でもいちばん高い勝率を残しており、ウェスタンカン・ファレンスでもダントツの1位でプレイオフに進んでいた。このレイカーズと、そしてイースタンカン・ファレンス1位となったクリーブランド・キャバリアーズ--こちらにもレブロン・ジェームズという「10年に1人」のスーパースターがいる--が決勝に進み、チャンピオンシップを争うだろう・・・。プレイオフ前の下馬評はそのような感じで、実際ファーストラウンドの戦いぶりを見ても、両チームは危なげなく勝ち進んできている。

 それに対し、バティエの所属するヒューストンといえば、オールスター明けからの後半戦で健闘し、ウェスタンカン・ファレンスで一時はレイカーズに続く2位でシーズンを終了するかと思われたが、最終戦ダラス・マーベリックスに敗れて結局5位。シリーズ7戦のうち先に4勝したチームが先に進めるというNBAのプレイオフ(トーナメント形式)では、ホームコート・アドバンテージの影響がとても大きく、4位になるのと5位で終わるのでは雲泥の差がある。

 スーパースターのひとり、トレイシー・マグレディがシーズン途中で故障し、今シーズン絶望となってしまったロケッツは、プレイオフのファーストラウンドで、若手中心のメンバーで勢いに乗る4位のポートランド・トレイルブレイザーズとぶつかったものの、そこはベテラン選手の経験が特にものを言うプレイオフということで、4勝2敗でポートランドを退けた。そうして勝ち上がった次の相手が優勝候補の筆頭と目されるレイカーズ、という次第である。

 さて。ESPNのサイトにアクセスすると、同カードの第三戦の模様を伝える記事が出ていたが、その見出しには「姚明、足の故障で戦線離脱。今シーズンは絶望」の文字。しかも、この日ホームコートで迎えた第3戦に破れ、せっかく敵地で挙げた1勝もフイにして1勝2敗で追う立場に立たされた。チームの柱を2人とも失ったロケッツに対し、レイカーズはコービーもそしてもうひとりのスター選手で、スペインチームを率いて世界選手権を制したこともあるポー・ガソールも、至って好調。ロケッツにはもはや戦う術もないだろう。同サイトの記事やコラムには、そんなことが書かれていたように思う・・・。

 ところが、ところが。
 今朝(月曜日朝)、ESPNのページを開いて驚いた。現地時間の日曜日午後に行われた第4戦を、なんと「飛車角落ち」のロケッツが制したというではないか。しかも、このゲームでリーディング・スコアラー(最高得点者)となったのは、ヒューストンのアーロン・ブルックスというNBA1年目のガード選手(年俸はたったの$1,045,560)。そうしてかのバティエも、コービー・ブライアントをたったの15点(7/17)に押さえたばかりか、自らも23得点を記録するという大活躍(シーズン中1試合の平均得点が7.3という男がである)。しかも、ロケッツはゲームのはじめからレイカーズを圧倒し、最大で29点もリードするという一方的な試合展開だったという。そして、この結果シリーズは2勝2敗のタイになった。第5戦はレイカーズのホームであるロサンゼルスで火曜日(米国時間)夜に行われる。

 残り3試合のうち、2試合はロサンゼルスで行われるという点だけ考えても、まだレイカーズの優位は変わらないだろう。ましてや、満身創痍のロケッツに対して、実力が上であるはずのレイカーズにはこれといった故障者もいないのだから。しかし、それでも、もしかして・・・。

 いまは、ただひたすらに第5戦が待ち遠しい。

追記:
 MLBオークランド・アスレティクスのGM(ゼネラル・マネージャー)、ビリー・ビーン(Billy Beane)を主人公にしたルイスのベストセラー『マネー・ボール』の映画化が進んでいるようである。個人的に期待が膨らむのは、ビーン役にブラッド・ピット、そして監督がスティーブン・ソダーバーグという『オーシャンズ』シリーズの面々であること。また、本物の選手やコーチも複数が出演を約束している(捕手のS・ホッテバーグ、デビッド・ジャスティスなど)。封切りは2011年ということでしばらく待つことになるが、ぜひ実現してほしいものだ。(なお『マネー・ボール』の後に出た『Blindside』のほうも、すでにサンドラ・ブロック出演で映画化が決まっているとは以前に書いた)

参考情報:
The No-Stats All-Star
Lakers vs. Rockets - Game Recap - May 10, 2009 - ESPN