NBAの周辺

NBA関連のメディアで話題になっているトピックなど

クリステンセン教授、デューク「ブルーデビルズ」、オバマ大統領

まったく別の文脈の事柄として、それぞれ記憶の片隅に埋もれていたことが、思っても見なかった接点でひとつにつながる。そんな経験は、ディレッタントにとって何よりの愉しみだが、これもそんな話。おそらく自分以外にふたりくらいしか面白がらない類の話だろうが、久しぶりに大いにびっくりしたのでちょっと書いてみる。

クレイトン・クリステンセン(Clayton Christensen)といえば、著書『イノベーションのジレンマ』("The Innovator's Dilemma")で一躍有名になったハーバード・ビジネススクールの教授。そのクリステンセンが新著"How Will You Measure Your Life"のプロモーションを兼ねて、このところいろんなメディアに顔を出している。

先週末にリリースされたBusinessweekにも"Tuesdays With Clayton"というタイトルの長い特集記事が載っていた。こういう特定の個人に焦点をあてた雑誌記事の常で、この記事でも本人の仕事関係だけでなく、その生い立ちや家族のことまで描かれていた--たとえば、ユタ州出身のモルモン教徒で、若い頃(70年代はじめ)には韓国で布教活動していたとか。そんな数々のティップスのなかに、「長男のマシュー("Matthew")は、2001年にバスケットボールの全米大学チャンピオンになったデューク大学ブルーデビルズ(Duke Blue Devils)の一員だった」という一節もあった(余談だが「6フィート10インチの身長」というから、だいたい208センチくらいか)

Christensen's eldest son, 6"10" Matthew, aka, "the Stormin' Mormon," played center for the Duke Blue Devils basketball team and was a member on Duke's 2001 National Championship squad.

デューク大学のバスケットボールチームといえば、名門中の名門で、毎年3月のNCAAトーナメント(64校)にも顔を出す常連チームのひとつ・・・もっぱらNBAのほうを追っかけている自分でもそのくらいの予備知識はあった。しかも、有名な「コーチK」ーーマイク・シャシェフスキー(Mike Krzyzewski)という名前だが、このスペルでは米国人でも発音するのが難しいらしく、もっぱら「コーチK」のニックネームで呼ばれているという話をどこかで聞いたーーが五輪やワールドカップで米国代表チームのヘッドコーチを何度も務めてきている(Wikipediaで調べてみると、北京五輪をはじめ、金メダル獲得だけで3度もある)とか、代表的なOBのなかにはグラント・ヒルーー父親がダラス・カウボーイズなどで活躍した有名なフットボール選手、母親はヒラリー・クリントン国務長官の大学時代のルームメート、奥さんはタミア(Tamia)というカナダ生まれのR&Bシンガーーーがいるとか、そんな強豪校のなかでもちょっと「毛並みの良い」イメージもあるチーム・・・。で、いずれにしても、そんなチームでプレイしていたというだけで十分すごいのに、オマケにNCAAトーナメントで優勝まで経験しているとはなんとも運の強いこと・・・というようなざっくりしたことをとっさに思い浮かべ、これはそのうち書くネタになりそうだな、と頭の中の引き出しにしまいこんだのだが...。


いま、まさに佳境に入りつつあるNBAのプレイオフ。「1stラウンドから、マイアミ(ヒート)とあたって苦戦していたはずのニューヨーク(ニックス)はさてどうなったかな」とNew York Timesのスポーツ欄にアクセスしてみると、ニックスの敗退を告げる記事のすぐ下に、マイアミのベテラン控え選手、シェイン・バティエ(Shane Battier)の名前がタイトルになった記事が目に入った。


Battier Still Going All Out for a Title - NYTimes

バティエといえば、地味ながら、数字(記録)に出ないところでの働きぶり=チームに対する貢献度がとても高い名脇役として知られる選手で、そのあたりの凄さについてはちょうど3年ほど前に、あのマイケル・ルイスが「NBA版の『マネーボール』」として記事にもしていた。


NBA流「スター選手抜きで、スーパースター軍団に勝つ方法」


この「通好み」「いぶし銀」といった形容詞が似合いそうなバティエについて採り上げたNYTimes記事は、次のような一文で始まっている。

マイアミ発 - ヒートのフォワード、シェイン・バティエが優勝の美酒を味わったのは、もう10年以上前のことーーあれは2001年のデューク(大学)のチームにいたときのことだった。
 
MIAMI ― It has been more than a decade since Heat forward Shane Battier tasted a championship, and that was with Duke in 2001.

・・・「おやおや」と思って、さっそくWikipedia で調べてみると、次のようなロースター(メンバーリスト)が。

No. Position Year Player
3 F So Nick Horvath
4 C So Carlos Boozer
5 G Sr Ryan Caldbeck
12 G/F Fr Andre Sweet
13 G Sr J.D. Simpson
14 F/G Sr Nate James
15 G So Andre Buckner
20 C So Casey Sanders
21 G Fr Chris Duhon
22 G So Jason Williams
31 F Sr Shane Battier
34 G/F So Mike Dunleavy, Jr.
40 F/C Fr Andy Borman
41 F Jr Matt Christensen
42 F Fr Reggie Love

2000–01 Duke Blue Devils men's basketball team


ほぼ予想通り、"Shane Battier"の名前とならんで"Matt Christensen"というのがある(Srはシニア=4年、Jrはジュニア=3年)。またバティエのほかにも、カルロス・ブーザー(Carlos Boozer:現シカゴ)、クリス・デュホーン(Chris Duhon:現オーランドー)、マイク・ダンリヴィーJr.(Mike Dunleavy, Jr.:現ミルウォーキー、有名なNBAコーチの倅)といった、いまも現役を続けるプロ選手、さらに2002年のドラフトで中国出身の姚明(Yao Ming)につづく全体第2位でシカゴに選ばれ、将来の活躍を期待されながら、バイク事故で事実上選手生命を絶たれたジェイ・ウィリアムズ(Jason Williams)など、実にすごい名前が並んでいる。クリステンセン教授の倅は、なんとも大した連中と戦っていたものである。

ちなみに、毎年ドラフト枠だけでも50人前後の新人がNBAに加入するということを考え合わせると、いっしょに戦ったチームの15人のうち、いまも3人が現役を続けている、というだけでも特筆に値すると思う。

しかし、この2000-01のDuke Blue Devilsには、クリステンセンをさらに上回るちょっとしたサプライズが隠されていた。

いちばん最後にある「背番号42 レジー・ラブ(Reggie Love)」の名前をクリックしてみると、そこの出てきたのは、オバマ大統領のバスケット仲間(ワンオンワンの練習相手)としてひと頃テレビのニュースなどでも採り上げられていたあの黒人の若者であった。